兵力30万人削減の大リストラ
習近平中国の軍制改革は
何を意味するのか?
中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」
さらに、兵力三〇万人削減という大リストラを開始している。これは軍縮ではない。軍のスリム化による強軍化であると同時に、軍の徐才厚、郭伯雄(ともに習近平の政敵として粛清された)の残党の粛清発表と受け止められている。この三〇万人の内訳の多くが「非戦闘員」といわれている。汚職の温床化している装備部の圧縮が真っ先に挙げられている。また三〇万人中一七万人は、陸軍の江沢民系、徐才厚系、郭伯雄系ら将校クラスのようだ。この軍のスリム化は二〇一七年までに完了させるという。
また、軍が経営する民間向けの商業活動の禁止を進めようとしている。軍病院や軍事学院、軍の倉庫の民間開放や軍所属の歌舞団や文藝工作団のテレビ番組出演などがこれまで認められてきた。軍の土地の使用権が商業マンション用に譲渡されたりもした。これらは軍の利権・腐敗の温床となっているということで、これらを一切認めない方針に切り替わる。この軍の利権を徹底摘発する過程で、おそらくは政敵排除を進めていくと思われる。
二〇一六年二月までに、四大総部解体、七大軍区から五大戦区(東部、南部、西部、北部、中部)の再編成が実行された。(※つづく)
※福島香織著新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』発売記念、緊急集中連載。
著者略歴
福島香織(ふくしま・かおり)
1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。共著も多数。
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